「去年まで通ってたのに、今年は落ちた」——その原因、価格かもしれません
最近、こんな相談がめちゃくちゃ増えてるんですよ。「今まで自社で申請してたIT導入補助金、急に通らなくなったんですけど……」って。
結論から言うと、事務局側が内部に「価格相場リスト」を持っていて、登録ツールの価格が相場と比較して高いと判断されたら落ちる——この仕組みを知らない人がかなり多い。公募要領を3回読んでみたら、行間に書いてあるんですよね、これ。
2026年度から名称が「デジタル化・AI導入補助金」に変わりましたが、審査の厳格化はすでに2024年後半から始まっています。2024年度に不正受給が多く発覚したことを受けて、事務局の目がかなり厳しくなっているんです。
事務局の「価格相場リスト」とは何か
IT導入補助金の事務局(中小企業基盤整備機構)は、登録済みITツールの価格データを蓄積しています。同じカテゴリ・同じ機能帯のツール同士を比較して、明らかに価格が高い申請には差戻しや不採択の判断が出ます。
具体的に何が起きるかというと、たとえばこういうケースです。
- 会計ソフト(年額約8万円)を導入するのに、保守サポート費用が年間60万円ついている
- ツール本体は安いのに「導入コンサルティング」名目で高額な役務費が上乗せされている
- 同等機能のツールが市場に複数あるのに、突出して高い価格設定のものを選んでいる
うちで実際に取った時の話なんですけど、最初の申請ではツール本体と役務費用の比率を1:1くらいで出したら差し戻されました。2回目は役務費用をツール価格の30%程度に抑えて再申請したら、すんなり通った。事務局は「ツール対役務」の比率もしっかり見ているということです。
2026年度の厳格化ポイント3つ
1. 役務費用への審査が特に厳しい
ツール登録されていても、役務(導入支援・保守・コンサル)の価格が「高額」という理由で差戻されるケースが激増しています。特に2024年度の不正受給問題以降、役務費用が本体価格を上回る申請はほぼ通らないと考えたほうがいい。
2. IT導入支援事業者の選定が重要に
IT導入支援事業者(ベンダー)によって、同じツールでも見積もり金額が大きく異なります。事務局は過去の採択データから「このツールなら相場はこのくらい」という基準を持っているので、ベンダー選定の段階で勝負がついているケースも少なくありません。
3. プロセス要件の明確化
これは前回の記事でも書きましたが、2回目以降の申請では過去に交付決定を受けたプロセスとの重複チェックが入ります。価格の問題に加えてプロセス重複まで引っかかると、挽回はほぼ不可能です。
自社申請で通すための「価格設計」チェックリスト
テンプレで時短すると、こういうチェックリストが効きます。申請前に必ず確認してください。
- 同等ツールの市場価格を3社以上比較する——事務局と同じ目線で「相場感」を持つ
- 役務費用はツール本体価格の30%以内に抑える——これを超えると差戻しリスクが跳ね上がる
- IT導入支援事業者の過去採択実績を確認する——採択率の高いベンダーは価格設計のノウハウを持っている
- 見積書の内訳を「機能単位」で細分化する——「導入支援一式」のような曖昧な記載は避ける
- 公募要領の審査項目と加点項目を3回読む——価格以外の加点を積み上げて総合点を底上げする
朝、いつものカフェで公募要領を読みながらNotionにまとめてるんですが、2026年度の要領は特に「導入効果の具体性」と「費用対効果の合理性」を審査するという記載が強調されています。価格が高いこと自体がNGなのではなく、その価格に見合う導入効果を数字で説明できるかどうかが問われているんです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 事務局の「価格相場リスト」は公開されていますか?
A. 公開はされていません。ただし、IT導入補助金の公式サイトで登録ツールの検索ができるので、同カテゴリのツール価格帯を自分で調べることは可能です。事務局と同じ目線で相場感を持つことが重要です。
Q2. 役務費用が高くても、理由を説明すれば通りますか?
A. 理論上は可能ですが、実務的にはかなり厳しいです。導入規模が大きい(複数拠点・100名以上の利用者など)場合は役務費用が高くなる合理的理由がありますが、小規模事業者で役務費用がツール本体を上回る申請は通りにくいのが現状です。
Q3. IT導入支援事業者を変えるだけで採択率は変わりますか?
A. 変わる可能性は十分あります。ベンダーによって価格設計のノウハウが異なり、過去の採択実績から事務局の相場観に合った見積もりを出せるベンダーは存在します。初回の打ち合わせで「過去の採択率」と「同業種での導入実績」を必ず確認してください。
Q4. 2025年以前に通った価格帯で2026年に申請したら落ちることはありますか?
A. あり得ます。2024年後半から審査基準が厳格化されており、以前は通っていた価格帯でも現在は差戻しになるケースが報告されています。毎年の公募要領を必ず読み直してください。
まとめ:価格設計は「申請書を書く前」に決まっている
IT導入補助金の採否は、申請書の文章力ではなく価格設計の段階でほぼ決まっている——これが2026年度の現実です。自社申請で通すなら、まず公募要領を読み込んで相場感を身につけること。そしてIT導入支援事業者との初回打ち合わせで、価格の妥当性について率直に話し合うこと。
地場のベンチャー仲間の勉強会でもこの話をしたら、「去年通ったのに今年落ちた」っていう人が3人もいて。全員、役務費用の比率が高すぎたパターンでした。
参考文献
- 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領」(2026年3月公開)
- 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 制度概要」公式サイト
- 中小企業庁「中小企業デジタル化・AI導入支援事業の概要」(令和8年4月版)






