「革新的新製品枠で申請しようとしたら、機械装置費がないとダメって言われました…」

2026年8月、地場ベンチャー仲間の勉強会にこんな相談が立て続けに3件来た。全員、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募(受付開始8月31日・締切10月30日)に向けて申請書を書いていた。

公募要領を3回読んでみたら、研究開発型中小企業が特に引っかかるポイントが3つあることがわかった。旧ものづくり補助金から引き継いだ「思い込み」と、新制度ならではの仕様変更がドッキングして、直前になって詰まるパターンが連発している。

今日はその3パターンを、実例を交えて整理する。10月30日の締切まで残り約79日(2026年8月12日時点)。まだ間に合う。ただし、今すぐ動かないとGビズIDプライムの取得すら間に合わない。

新事業進出・ものづくり補助金(第1回)のスケジュール確認

  • 申請受付開始:2026年8月31日(月)
  • 申請締切:2026年10月30日(金)18:00 ※当初9月30日から変更(2026年7月17日付)
  • 採択発表:2026年12月頃予定
  • 交付決定:2027年2〜3月頃(採択後2〜3か月)

革新的新製品・サービス枠の補助上限は従業員規模によって異なる。5人以下は750万円、6〜20人は1,000万円、21〜50人は1,500万円、51人以上は2,500万円(賃上げ特例適用時はそれぞれ50〜1,000万円の上乗せ)。補助率は1/2(小規模事業者等は2/3)だ。

パターン1:機械装置・システム構築費をゼロにして研究計画を組んでいる

これが一番多いミスだ。研究開発型の会社ほど「知財出願費と外注委託費だけで申請しよう」という発想になりがちで、気づかぬうちに革新的新製品・サービス枠の根幹要件を外してしまっている。

公募要領を3回読んでみたら、はっきり書いてある。革新的新製品・サービス枠の補助対象経費には機械装置・システム構築費が含まれており、実質的にこれを計上することが前提となっている。知的財産権関連経費や外注費・委託費だけの計画では、審査の段階で「革新的な製品を開発するのに設備投資が一切必要ないのはなぜか」という根本的な疑義が生まれる。

なぜ研究開発型が引っかかるのか

研究開発型の中小企業がやりがちなのは、こういうパターンだ。

  • 「試作品はまだ先の話なので設備は不要」
  • 「ソフトウェア開発だから機械装置費は関係ない」
  • 「知財の出願費と外注の開発費で経費を組んだ」

ところが、革新的新製品・サービス枠は「技術的革新性のある新製品・新サービスの開発」を補助する制度だ。開発に必要な実験装置、試作用の設備、研究システムの構築費などを含まない計画書は、「この枠で補助すべき開発内容なのか?」という疑念を生む。

対策:先に機械装置の見積もりを取る

試作に使う設備や測定装置、研究用のシステム構築(ソフトウェア含む)の見積もりを先に3社から取る。これが経費計画の起点になる。外注費や知財費はその後に積み上げる設計にすること。

機械装置・システム構築費が対象経費の中核にあれば、他の経費(外注費・委託費は補助対象外費用総額の1/2以下という上限あり、知的財産権関連経費など)も整合性を持って積み上げられる。

パターン2:「認定支援機関の確認書が廃止」=「計画書を外部委託してOK」という誤解

うちで実際に取った時の話なんですけど、旧ものづくり補助金のころは「認定経営革新等支援機関による確認書」が必須書類だった。銀行や税理士・中小企業診断士などの認定支援機関に計画書をチェックしてもらって、確認書に押印してもらわないと申請できなかった。

ところが、新事業進出・ものづくり補助金ではこの確認書の提出が不要になった。これ自体は手続き簡略化で良いことなのだが、問題はこの変化の「解釈のずれ」だ。

誤解:「確認書不要=計画書を丸投げしていい」

旧制度経験者の一部が「認定支援機関の確認書がいらないなら、補助金コンサルに全部書いてもらえばいい」と考えてしまう。これは大きな罠だ。

公募要領には明確に書いてある。事業計画書は申請者自身が作成する義務があり、第三者への作成委任は認められない。発覚した場合は不採択・採択取消・交付決定取消の対象になる。

さらに深刻なのが、口頭審査の存在だ。採択審査の一環として、申請内容について申請者自身が口頭で説明を求められるケースがある。補助金コンサルが「書いてくれた」計画書の内容を自分の言葉で説明できなければ、その場で詰まる。技術的な根拠や事業化の根拠を「自分の事業として」語れるかどうかが問われる。

正しい認定支援機関の活用方法

認定支援機関への相談自体は問題ない。「計画書のブラッシュアップ」「数値の妥当性確認」「書き方のアドバイス」を受けることは推奨されている。ポイントは「書いてもらう」のではなく「自分で書いたものをレビューしてもらう」ことだ。

旧ものづくり補助金 新事業進出・ものづくり補助金
認定支援機関の確認書:必須 認定支援機関の確認書:不要(助言は可)
計画書の自社作成義務:あり 計画書の自社作成義務:あり(強化)
口頭審査:一部あり 口頭審査:あり

「確認書廃止で楽になった」のではなく、「自社作成の責任が明確化された」という理解が正しい。

パターン3:旧ものづくり補助金(12か月)を基準に実施期間10か月のスケジュールを組む

革新的新製品・サービス枠の実施期間は10か月だ。旧ものづくり補助金の一般型は通常12か月(延長申請で18か月も可能だった)。この2か月の差が、研究開発フェーズの長い案件には致命的になる。

しかも、注意すべき点がある。実施期間の起算は交付決定日からだ。採択発表(2026年12月予定)から交付決定まで、書類審査・交付申請のプロセスで2〜3か月かかる。つまり:

  • 採択発表:2026年12月頃
  • 交付申請・交付決定:2027年2〜3月頃
  • 実施期間終了:2027年12月〜2028年1月頃

交付決定前の着手は原則禁止なので、実質的な研究開発着手は2027年2〜3月からになる。申請書を書いている今(2026年8月)から数えると、実際に装置を動かして開発できるのは約11〜12か月後からだ。この「待ち時間」を含めたスケジュール設計ができていない計画書は、審査員に「本当に10か月で完成するの?」と疑問を持たれる。

研究開発型が特に注意すべきポイント

試作→評価→改善のサイクルを回す研究開発では、10か月の実施期間に以下を全部収める必要がある:

  • 設備の発注・納品(特注品は3〜6か月かかる場合も)
  • 初期試作・動作確認(1〜2か月)
  • 性能評価・課題抽出(1〜2か月)
  • 改善試作・再評価(1〜2か月)
  • 実績報告書類作成(1か月)

特注設備がある場合は、交付決定と同時に設備メーカーへ発注しても納品まで3〜6か月かかることを前提にしなければならない。実施期間10か月の半分が設備待ちで終わってしまうケースは、旧制度でも頻発していた。

枠の選択肢も再検討する

もし開発期間が14か月必要な案件であれば、新事業進出枠(実施期間14か月・補助上限最大9,000万円)への枠変更を検討する価値がある。革新的新製品枠との違いは「新市場への進出要件」が追加される点だが、既存市場とは異なる顧客層・用途への展開が明確に語れるなら、新事業進出枠のほうが実施期間・補助上限ともに有利なケースがある。

10月30日締切からの逆算スケジュール(2026年8月12日時点)

時期 やること
今すぐ(8/12〜8/17) GビズIDプライム申請(取得まで約1〜2週間、8/31受付開始に間に合わせるため8/17が実質デッドライン)
8月中 機械装置の見積もり取得(最低3社)、枠選定確定(革新的新製品枠 or 新事業進出枠)
9月前半 事業計画書の骨格完成、売上見込み→付加価値額4.0%→賃上げ3.5%の三角チェック完了
9月後半〜10月前半 計画書の認定支援機関へのレビュー依頼(任意)、加点項目の取得
10月中旬〜28日 最終申請書完成、電子申請ポータルでの入力・送信
10月30日(金)18:00 締切

テンプレで時短すると、事業計画書の骨格(技術的課題→解決方法→事業化計画)は1週間で草稿を作れる。ただし機械装置の見積もりが揃っていないと数値が入れられないので、この見積もり取得が最優先アクションだ。

FAQ

Q1. 機械装置費は必ずいくら以上計上しなければいけないという基準はありますか?

公募要領上、最低計上額の数値基準は明記されていません。ただし、補助対象経費の計上項目として機械装置・システム構築費が位置づけられており、実質的にこれが計画の中核を担う必要があります。「研究開発のために必要な設備・システムの投資額」が合理的に説明できる金額であれば問題ありませんが、象徴的に数万円だけ計上するような計画は審査で疑問を持たれます。

Q2. 認定支援機関への確認書の依頼は今後も一切不要ですか?

新事業進出・ものづくり補助金(第1回公募)では、旧ものづくり補助金のような確認書の提出は不要です。ただし、事業計画書のブラッシュアップのために認定支援機関や専門家のアドバイスを受けること自体は推奨されています。「確認書の書類手続きが不要」と「専門家サポートが不要」は別の話です。

Q3. 実施期間の延長申請はできますか?

旧ものづくり補助金では一定条件のもとで実施期間の延長(18か月等)が認められていましたが、新事業進出・ものづくり補助金の第1回公募では革新的新製品・サービス枠の実施期間は10か月と公募要領に明記されています。延長の可否・条件については今後の公募要領改訂や事務局からの案内を確認してください。特注設備がある案件は納期回答を交付決定前に確保しておくことが重要です。

Q4. GビズIDの取得が8月31日の受付開始に間に合わない場合はどうなりますか?

GビズIDプライムは電子申請の必須要件です。取得できていない場合は申請を進めることができません。取得に通常1〜2週間かかるため、8月31日の受付開始に間に合わせるには遅くとも8月17日頃までに申請する必要があります。ただし、申請締切は10月30日なので、8月31日に申請できなくても10月30日まで時間があります。

Q5. 研究開発フェーズがTRL(技術成熟度)4〜5段階の案件は革新的新製品枠で申請できますか?

革新的新製品・サービス枠は事業化への具体的な道筋が審査で問われます。TRL 4〜5の段階では事業化の具体性(TAM/SAM/SOM・収益モデル・販路計画)を説明しにくく、10か月の実施期間内に商業化レベルまで到達できるかという疑問も生じます。TRL 4〜6段階の研究フェーズの案件は、Go-Tech事業(公設試連携・TRL 4〜6対応)への申請も検討する価値があります。

まとめ

新事業進出・ものづくり補助金(第1回)の革新的新製品・サービス枠で研究開発型中小企業が直前に詰まる3パターンを整理した。

  1. 機械装置費の計上が実質必須:知財費・外注費だけの計画は枠の趣旨から外れる
  2. 確認書廃止≠計画書委託OK:自社作成義務と口頭審査は継続している
  3. 実施期間10か月は旧制度より短い:特注設備の納期を含めたスケジュール設計が必須

公募要領を3回読んでみたら、どのパターンも公募要領に明確に書いてある話だ。「なんとなく旧制度と同じだろう」という思い込みが、申請直前の詰まりを生んでいる。今日から動いても10月30日の締切には間に合う。まず今すぐGビズIDプライムを申請して、機械装置の見積もりを3社に打診することから始めよう。


参考文献・参考リンク