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結論から言うと、業務改善助成金(令和8年度)の申請窓口は9月1日に開く。今は8月。スタートアップが今すぐ動かないと、この助成金は取れない。

毎年この時期、クライアントから「業務改善助成金、今年は使えますか?」という相談が集中する。そのたびに「制度を先に整えてから動いてください」と返しているが、令和8年度は要件が3か所変わった。変更点を知らないまま9月に申請に行って、窓口で詰まるスタートアップが毎年出る。

今回は、令和8年度の業務改善助成金でスタートアップが特に引っかかりやすい3つの落とし穴を、8月中に対処できるレベルで解説する。

業務改善助成金(令和8年度)の基本スペック

まず前提の整理から。業務改善助成金は、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、かつ生産性向上につながる設備投資を行った場合に、その費用の一部を助成する制度だ。「賃上げ+設備投資」がセットで必須という点を最初に押さえておく。

コース引上げ額助成上限(10人以上)助成率(最賃1,050円未満)
50円コース50円以上最大130万円4/5
70円コース70円以上最大300万円4/5
90円コース90円以上最大600万円4/5

令和8年度から3コースに再編された(令和7年度は30円・45円・60円・90円の4コース)。事業場内最低賃金が1,050円以上の事業場は助成率が3/4に下がる。都内のスタートアップはほぼ1,050円を超えているため、3/4適用と覚えておいてほしい。

落とし穴①:対象労働者の「雇用保険被保険者」要件を見落とす

スタートアップでよくあるのが、パートタイマーや短時間アルバイトを賃上げ対象にカウントしているケースだ。令和8年度から、賃上げ対象としてカウントできる労働者は「雇用保険被保険者」に限定された。週所定労働時間が20時間未満の短時間労働者は雇用保険に加入できないため、助成の対象外になる。

具体的に何が起きるかというと、「10人のうち3人が週15〜19時間のパートで雇用保険未加入」という構成だと、実際に賃上げ対象としてカウントできるのは7人だ。コースの区分(対象者数による上限額の段階)が変わり、想定より助成上限が下がる。

対処法:8月中にやること

  • 全スタッフの雇用保険加入状況を確認する
  • 週所定労働時間が20時間未満の労働者は対象外として対象人数を再集計する
  • 助成上限額が変わる場合は設備投資の規模を調整する

一点追加で確認してほしいのが、雇用保険未加入のパートタイマーを今から加入させれば解決するかというと、そこには次のパターン②が絡んでくる。

落とし穴②:「雇入れ後6ヶ月」ルールを逆算せず新規採用者が対象外に

令和8年度から、賃上げ対象としてカウントできるのは「雇入れ後6ヶ月以上経過した労働者」に限定された。令和7年度は3ヶ月だったが、6ヶ月に延長されている。

スタートアップが採用拡大フェーズで、「今年の春(4〜5月)に採用した社員を賃上げ対象にしたい」と考えているなら要注意だ。9月に申請しようとしても、4月入社なら6ヶ月経過するのは10月。9月の申請時点では要件を満たしていない。

実際にあったケースを話す。シリーズAのSaaSスタートアップで、春に採用したコーポレートスタッフ5名を対象として業務改善助成金を設計していた。しかし申請前の書類チェックで「雇入れ後6ヶ月未経過」が判明し、助成額が見込みの半分以下に縮んだ。この手の計算ミスは、申請前ではなく採用計画の段階で防ぐべきものだ。

逆算スケジュール(令和8年度・9月申請の場合)

  • 9月1日申請 → 対象労働者は3月1日以前入社でなければならない
  • 10月・11月申請を狙う場合は4〜5月入社者も対象に入る可能性あり(都道府県最低賃金の発効日との関係で締切が変わる)
  • 今後の採用者を対象にするには「入社日+6ヶ月」を必ずカレンダーに落とし込む

落とし穴③:「9月〜11月限定」の申請窓口をバックオフィスが後回しにする

令和8年度から、業務改善助成金の申請期間が9月〜11月に限定された。令和7年度以前は通年申請が可能だったが、今年からは窓口が開いている期間が決まっている。

正確には、都道府県別に「地域別最低賃金の発効日前日」か「11月30日」のいずれか早い日が締切になる。東京都の場合、最低賃金の改定が毎年10月に行われるため、実質的な申請ウィンドウは9月〜10月初旬という短い期間になることが多い。

スタートアップのバックオフィスは兼務が当たり前で、「補助金は年中申請できる」という前提で動いていることが多い。この制度は違う。9月になってから「今年は使えますか?」と社労士に相談しても、設備投資の見積もりや申請書類の準備に2〜3週間はかかる。実質的に動き始めるタイムリミットは8月末だ。

絶対に守るべき申請順序

  1. 申請書類・見積書の準備(8月中)
  2. 交付申請を提出(9月以降、交付決定前に発注・契約しない)
  3. 交付決定通知の受領
  4. 設備投資の発注・契約(交付決定後のみ)
  5. 賃上げ実施
  6. 実績報告・支給申請

追加確認ポイント:事業場内最低賃金の計算と固定残業代

上記3パターン以外に、毎年引っかかる事業者が多いのが「事業場内最低賃金の計算間違い」だ。固定残業代(みなし残業代)を月給に含んでいるスタートアップは特に要注意。業務改善助成金の事業場内最低賃金の計算では、固定残業代は除外して時給換算しなければならない。

月給30万円(固定残業40時間含む)という求人をしているスタートアップで、固定残業代を抜くと実質的な基本給は22〜24万円台になることが多い。時給換算すると想定より低く、引き上げ前の最低賃金水準が変わる。申請前に必ずチェックしてほしいポイントだ。

8月中にやる確認チェックリスト

  1. 雇用保険加入状況の確認:全スタッフの週所定労働時間と雇用保険加入状況をリスト化する
  2. 入社日からの経過月数チェック:6ヶ月未経過者を除いた対象人数を確定させる
  3. 事業場内最低賃金の正しい計算:固定残業代除外後の時給換算で現状の最低賃金水準を確認する
  4. 設備投資の計画と見積もり取得:交付決定前に発注・契約しない(見積もりのみOK)
  5. 都道府県の申請締切日の確認:自社の事業場がある都道府県の最低賃金発効日を調べる

制度を先に整えてから設備の発注に動く。これが業務改善助成金の鉄則だ。スタートアップの「まず動く」文化と、この制度の手順は根本的に噛み合わない。8月中に確認して、9月の申請窓口開放と同時に動けるよう準備しておくこと。

まとめ

令和8年度の業務改善助成金でスタートアップが引っかかりやすい3つの落とし穴は以下の通りだ。

  • 落とし穴①:対象労働者の「雇用保険被保険者」要件を見落とし、週20時間未満のパートをカウントしてしまう
  • 落とし穴②:「雇入れ後6ヶ月」ルールを逆算せず、春採用の社員が9月申請時点で対象外と判明する
  • 落とし穴③:「9月〜11月限定」の申請窓口を通年と勘違いし、申請準備が間に合わなくなる

3つとも、今この8月に確認すれば対処できる。9月になってからでは遅い。

よくある質問(FAQ)

Q1. 令和8年度の業務改善助成金で変わった主なポイントを教えてください

A. 3点が主な変更点です。①対象労働者が雇用保険被保険者に限定(週20時間未満のパートは対象外)。②雇入れ後6ヶ月経過要件(令和7年度は3ヶ月)。③申請期間が9月〜11月に限定化(令和7年度以前は通年申請可)。コース体系も4コースから50円・70円・90円の3コースに再編されました。

Q2. 週20時間未満のパートを今から雇用保険に加入させれば今年の申請に間に合いますか?

A. 雇用保険加入要件は解決できますが、「雇入れ後6ヶ月経過」要件との兼ね合いがあります。今年春入社のパートタイマーなら、10月以降の申請窓口(都道府県の最低賃金発効前日まで)に合わせれば対象に入れられる可能性があります。8月中に社労士と確認してください。

Q3. 設備投資の見積もりは交付決定前に取っても大丈夫ですか?

A. 見積もりの取得はOKです。ただし、発注・契約は交付決定後でなければなりません。見積書を申請書に添付し、交付決定通知を受けてから発注するのが正しい順序です。先に発注・契約した設備は助成対象外になります。

Q4. 固定残業代を含む月給制社員の事業場内最低賃金はどう計算しますか?

A. 固定残業代(みなし残業代)は除外して計算します。月給から固定残業代を引いた基本給部分を所定労働時間で割って時給換算した額が対象になります。都道府県の地域別最低賃金との比較もこの額で行います。スタートアップで固定残業40時間込みの求人をしている場合、実際の時給換算額が想定より低くなることが多いため要注意です。

Q5. 複数の事業場を持つスタートアップの場合、助成上限はどうなりますか?

A. 令和8年度から、同一事業主が複数の事業場で申請する場合に事業主単位で年間600万円の合計上限が設けられました。複数拠点を持つ企業は申請の優先順位を事前に決めておく必要があります。

参考文献

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