8月25日の第4次締切が終わった。

「間に合わなかった」「9月の回に向けて準備したい」——こういう連絡がこの1週間で福岡の仲間から3件来た。気持ちはわかる。でも問題は「次の回」までの期間が29日しかないことだ。

デジタル化・AI導入補助金2026の第5次締切は2026年9月29日(火)17:00。交付決定は11月9日(月)予定、事業実施期間は交付決定日〜2027年4月30日という設計になっている。

朝のカフェで第5次向けに公募要領を3回読んでみたら、「第4次に続いて5次も逃す」企業に共通するパターンが3つに絞れた。今回はそれを正直に書く。


なぜ第5次で「準備できた気分」のまま落ちるのか

第4次に申請した人もしなかった人も、今この瞬間に油断しやすい状態にある。

申請した人は「一度やったからわかってる」と思い込む。しなかった人は「次こそ余裕を持って準備しよう」と思いつつ後回しにする。どちらも9月末に詰まる。

採択率はここ数回、通常枠で44〜50%前後を推移している。半数近くが落ちる競争で、今から3つのポイントを押さえれば採択側に入れる可能性が上がる。逆にこれをやらないと、やった人との差は確実に開く。


パターン1:加点3点(無料・即日)を9月末まで放置して採択競争で自滅

デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠には加点項目が10項目ある。うち3項目は今日・無料・即日で取得できる

  • IT戦略ナビwith(情報処理推進機構の無料診断ツール活用宣言)
  • 省力化ナビ(中小機構の省力化お助けナビ活用宣言)
  • 成長加速マッチングサービス(中小機構の無料マッチング登録)

これら3つは費用ゼロ、取得に必要な時間は合計1〜2時間、取ったあとのペナルティも一切ない。

うちで実際に取った時の話なんですけど、最初のものづくり補助金申請のときに加点ゼロで落ちて、次の回でこの3点を全部取って採択された経験がある。「書類の中身が変わったわけじゃないのに」と思うかもしれないが、競争倍率が高い回では加点差が採否を分けることが実際にある。

問題は、9月29日の締切当日にこれらを取ろうとしても「申請する前には取れていること」が要件になっている項目があること。今日・今週中に取るのが鉄則だ。

今週中にやること(パターン1の対策)

  1. IT戦略ナビwithにGビズIDでログインして診断を開始・宣言登録(30分)
  2. 省力化ナビで省力化に関する宣言登録(15分)
  3. 成長加速マッチングサービスに企業情報を登録してマッチング申込(30分)

パターン2:IT導入支援事業者への連絡を9月20日以降に入れて対応不可の門前払い

デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者との共同申請が前提だ。事業者側がシステムに入力を完了しなければ申請ボタンを押せない構造になっている。

9月29日締切というのは、9月末の四半期末と完全に重なる。

IT導入支援事業者の担当者は9月下旬、補助金申請の対応だけでなく自社の四半期決算・受注対応も抱えている。早い事業者は9月中旬以降の「新規対応受付停止」を事前にアナウンスするところも出てくる。

締切まで10日を切った9月19日(金)以降に「第5次に申請したいんですが」と連絡しても、物理的に対応できないと断られるケースが出る。

公募要領を3回読んでみたら明記してある——「共同申請者であるIT導入支援事業者が申請に係る所定の手続きを行うことができる状態にあること」。これは「事業者が対応可能な状態にあること」を申請要件としているということでもある。

今週中にやること(パターン2の対策)

  1. 導入したいITツールを事務局ポータルのITツール検索で3本ピックアップする
  2. 各ツールに紐づくIT導入支援事業者に今週中(9月5日まで)に連絡を入れる
  3. 初回打ち合わせを9月15日(月)までに完了させる逆算スケジュールを先に伝える

「ツールを選んでから事業者を探す」という順序は鉄則だ。事業者を先に決めると選択肢が自動的に狭まる。


パターン3:2回目以降の申請者がプロセス重複を確認せず同じ枠で再申請して減点・不採択

IT導入補助金2022〜2025、またはデジタル化・AI導入補助金2026の第1〜4次で交付決定を受けた企業が第5次に申請する場合、過去に補助を受けたプロセス区分との重複が審査で確認される。

重複があると減点・不採択になる可能性が高い。

「ツールが違うから大丈夫」は勘違いだ。プロセス区分は「ツール」単位ではなく「業務領域」単位で判定される。例えば過去に「顧客対応」プロセスで受給した企業が、今回別の顧客管理ツールを入れようとしても同一プロセスとして扱われる。

テンプレで時短すると——過去の申請書をそのままコピーして使い回すのが一番危ない。プロセス区分が過去と同じになっている可能性が高いからだ。

今週中にやること(パターン3の対策)

  1. 過去のIT導入補助金・デジタル化AI導入補助金で取得した「プロセス区分」の一覧を過去の申請書から確認する
  2. 第5次で申請予定のツールが対応するプロセス区分を事務局ITツール検索で確認する
  3. 重複があれば「空いているプロセス区分」から逆算してツールを選び直す

「入れたいツールからプロセスを探す」ではなく、「空きプロセスからツールを逆算して選ぶ」——これが2回目以降の申請設計の基本だ。


第5次(9/29締切)からの逆算スケジュール表

時期 やるべきこと 所要時間の目安
9月1〜5日(今週) 加点3点取得・GビズID有効期限確認・SECURITY ACTION確認・IT導入支援事業者へ連絡 各1〜2時間
9月8〜12日 IT導入支援事業者との初回打ち合わせ・ツール確定・見積書依頼 2〜3時間
9月15〜19日 3年間事業計画の労働生産性数値確認・申請書作成・審査項目突き合わせ 4〜6時間
9月22〜26日 IT導入支援事業者と共同レビュー・修正・申請システム入力確認 2〜3時間
9月27日(土)を社内締切に設定 最終確認・申請ボタン押下 1時間

9月29日(火)が公式締切だが、社内締切は9月27日(土)にしておくのが安全圏だ。締切当日はシステムが重くなる。


申請前チェックリスト(第5次版・7項目)

  • ☐ GビズIDプライムの有効期限を確認した(2024年7月以降取得分は有効期限2年3ヶ月)
  • ☐ SECURITY ACTIONを新管理システム(2026年4月移行版)で宣言済みか確認した
  • ☐ 加点3点(IT戦略ナビwith・省力化ナビ・成長加速マッチング)を取得した
  • ☐ 過去の交付決定プロセス区分をリストアップして重複がないか確認した
  • ☐ 導入候補ツールを事務局ITツール検索で確認した(登録済み・AI機能フラグ・プロセス数)
  • ☐ IT導入支援事業者に今週中に連絡して初回打ち合わせを9月15日以前に設定した
  • ☐ 3年間事業計画の労働生産性計算式(付加価値額ベース・2026年版)で数値を計算した

よくある質問(FAQ)

Q1. 第4次で不採択になった場合、第5次で同じ申請書を提出しても大丈夫ですか?

文章だけ修正して再提出するのが一番多い失敗パターンです。公募要領の審査項目と申請書を1対1で突き合わせた上で、プロセス重複の確認と加点棚卸しを必ず行ってください。文章の出来より審査項目への対応と加点の差が採否を分けるケースが多い。

Q2. 加点3点の「成長加速マッチングサービス」は登録するだけで加点になりますか?

登録(マッチング申込)が完了した状態が申請時点で確認できれば加点対象になります。申請書に登録番号等を記載する項目があるので、必ず取得後にスクリーンショットで記録を残してください。

Q3. IT導入支援事業者を今から探す場合、どこから始めればいいですか?

事務局ポータルサイトの「ITツール検索」で導入したいツールを先に3〜5本ピックアップし、そのツールを扱うIT導入支援事業者を確認するのが正しい順序です。営業電話で来た1社目を即決するのは避けてください。最低3社を比較し、対応枠・AI機能フラグ・プロセス数を文書で確認してから決定してください。

Q4. 第5次で採択されると交付決定はいつになりますか?

第5次(2026年9月29日締切)の場合、交付決定は2026年11月9日(月)予定です。事業実施期間は交付決定日〜2027年4月30日(金)17:00が目安とされています。年内に採択・交付を受けて2027年度上半期中に導入を完了させるスケジュールが組めます。

Q5. 通常枠とインボイス枠、どちらで申請するか迷っています。

会計・受発注・決済のいずれかの機能を持つITツールを導入する場合は、インボイス枠(インボイス対応類型)を優先してください。補助率が通常枠の1/2に対してインボイス枠は3/4〜4/5と有利です。ただしIT導入支援事業者がインボイス枠に登録済みかどうかを先に事務局ポータルで確認することが必須です。


まとめ:今週がすべての分水嶺

第5次締切(9月29日)まで29日。長いようで短い。

やることは3つだけだ。

  1. 加点3点を今日・今週中に取得する(IT戦略ナビwith・省力化ナビ・成長加速マッチング)
  2. IT導入支援事業者に今週中に連絡して9月15日以前に初回打ち合わせを設定する
  3. 過去の交付決定プロセス区分を確認して重複がないかチェックする(2回目以降の申請者)

採択率が50%を切る競争の中で、無料・即日で取れる加点を取らない理由はない。IT導入支援事業者への連絡を1週間遅らせる理由もない。

今日、動く。


参考リンク