「青森県に独自の補助金はあるのか」という問い合わせが増えている。答えは Yes だ。ただ、整理の仕方を間違えると、今すぐ使える制度が埋もれ、締切が過ぎた制度ばかり拾うことになる。

青森県の予算サイクルを分析してきた立場から、2026年9月3日時点で公式ページを確認した制度だけをまとめる。「たぶんある」では書かない。ページで確認できた制度だけを取り上げる。

国の制度と青森県独自の制度、何が違うか

まず、この区別を最初に押さえておく。

国のものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金は、全国の事業者が同じ審査の土俵に立つ。採点も国(または認定経営革新等支援機関)が行い、青森県内の事業者も全国の事業者と横並びで競う仕組みだ。

青森県独自の補助金は違う。「青森県内に事業所がある」ことが前提で、審査基準も県の政策優先度に沿って設計されている。令和8年度の例でいえば「賃上げ」「若者採用・定着」「GX(脱炭素)」「DX」という4軸が補助金設計に貫かれている。議会会期前の動きを見ると、知事がこの4軸を一貫して掲げていることがわかる。

もう一つ重要な違いは審査の速さだ。国の補助金は採択まで数か月かかることが多い。県の補助金は随時受付型であれば申請後2〜3週間で採否が決まるケースもある。資金繰りを急いでいる場合は、国より先に県を確認したほうが現実的なこともある。

重複補助は基本的に不可だが、「経費の切り分け」さえできれば国・県の両方を活用できる。この点の詳細は「申請の順番」のセクションで解説する。

2026年9月3日時点で申請できる制度

公式ページで随時受付を確認できた制度を2件挙げる。いずれも予算がなくなり次第終了するため、早めの確認を勧める。

① 中小企業若手人財確保・定着支援事業費補助金

青森県こども家庭部が窓口の補助金で、若手人材の採用・定着促進に取り組む県内中小企業を支援する。

  • 補助率:対象経費の1/2相当額
  • 上限額:50万円(千円未満切り捨て)
  • 対象者:県内に事業所を持つ中小企業で、以下の2つに登録済みであること
    • あおもり若者定着サポート企業
    • あおもり県内就職促進パートナー企業
  • 対象経費:謝金・旅費・通信運搬費・リース料・消耗品費・広報費・会場借上費・委託費など(消費税は除外)
  • 受付方式:随時受付(先着順、予算消尽で終了)
  • 採否決定:申請後2〜3週間

注意点が一つある。「あおもり若者定着サポート企業」「あおもり県内就職促進パートナー企業」の両方に登録済みであることが申請要件だ。未登録の場合は、補助金申請より前に登録手続きが必要になる。手続きに一定の時間がかかるため、申請を検討しているなら早めに登録状況を確認してほしい。

② プロフェッショナル人材誘致促進事業費補助金

都市圏のプロフェッショナル人材を青森県内企業が採用・活用する際の費用を支援する制度だ。副業・兼業での活用も対象に含まれる点が特徴的で、正規雇用のハードルが高い中小企業には使いやすい入り口になっている。

  • 採用(正式雇用)の場合:補助率1/2、上限50万円
  • 副業・兼業(初回):補助率4/5、上限50万円
  • 副業・兼業(2回目以降):補助率1/2、上限50万円
  • 対象者:県内に事業所を有する中小企業者等(資本金3億円以下または常時使用従業員300人以下)
  • 申請タイミング:採用・活用開始の10日前までに申請が必要(事後申請は対象外)
  • 受付方式:随時(予算消尽で終了)

「都市部の専門家に副業で入ってもらいたい」というニーズがある企業では、初回の補助率4/5という点は見逃せない。ただし、採用・活用前に申請という時系列が崩れると対象外になる。人材が決まってから慌てて問い合わせても間に合わないケースがある。採用・活用スケジュールが固まった段階で、すぐに申請書類の準備に入ること。

申請の順番と重複の落とし穴

複数の補助金を使いたい場合、「どれを先にするか」が重要だ。順番を間違えると、一方を取ったために他方が使えなくなる。

国の補助金と県の補助金は「同一経費」への重複が禁止

国のものづくり補助金で設備Aの費用を補助対象にした場合、同じ設備Aの費用を青森県の補助金の対象にはできない。「同一事業における同一経費への重複補助は不可」という原則は、国・県ともに明文化されている。

設備Aは国の補助金、設備Bは県の補助金、という経費の切り分けは可能だ。ただし、補助金ごとに「この経費はどの補助金の対象か」を事前に整理した計画が必要になる。曖昧なまま申請すると、後から経費の修正を求められる。

先に採択通知が出たほうの経費計画が優先される

国の補助金の採択通知が出た後で県の補助金を申請するパターンが多い。逆に、国の採択結果を待たずに県の制度を先に申請・採択されるケースもある。この場合は、後から申請する国の補助金で「県から補助済みの経費」を切り分けて計画書を書く必要がある。

経済産業局時代に見てきたパターンでは、「国の審査が長くかかりすぎて県の申請タイミングを逃す」という事例が一定数あった。青森県の随時受付型補助金は年度内であれば申請できるが、予算が尽きれば終了する。国の審査待ちで半年が過ぎたころには、県の補助金の予算が埋まっていた——という事態を避けるには、国と県を並行して動かすことが現実的だ。

若者採用系と人材誘致系は別事業なら併用可能

「中小企業若手人財確保・定着支援事業費補助金」と「プロフェッショナル人材誘致促進事業費補助金」は、対象となる活動が異なる。若手の採用強化と都市部専門家の副業活用を同時に進める場合は、それぞれ個別に申請することができる。ただし、重複する経費が生じないよう計画を明確に区分すること。

よくある不採択の理由

1. 登録要件の確認漏れ

若手人財確保補助金の場合、「あおもり若者定着サポート企業」への登録が申請要件だ。この登録をしていないまま申請書を提出して「未登録だから対象外」と判明するケースがある。制度ページの「申請要件」欄を一字一句確認すること。

2. 申請タイミングのズレ

プロフェッショナル人材誘致補助金は「採用・活用開始の10日前」が申請デッドラインだ。人材が決まってから慌てて申請しても、間に合わない。採用スケジュールを固めた段階で、すぐに申請に動く。

3. 予算消尽の見落とし

随時受付型の補助金は「予算がなくなり次第終了」という構造だ。年度後半に申請しようとしたら予算が埋まっていた、という事態は珍しくない。この県の予算編成サイクルだと、前期(4〜9月)に予算の大半が消化される傾向がある。申請を考えているなら上期に動くほうが安全だ。

4. 補助対象経費の誤解

消費税は補助対象経費から除外されるケースが多い。また直接人件費は対象外の補助金も多い。「何が対象か・何が対象外か」は制度ごとに異なる。担当窓口に電話で確認するのが最も確実で、申請前の一本の電話が後の差し戻しを防ぐ。

過去の制度(令和8年度実績・次年度の参考)

以下の制度は2026年9月3日時点では募集終了または受付終了となっている。令和9年度の公募スケジュールを読む参考として取り上げる。

持続的賃上げ環境整備促進事業費補助金(2026年9月1日で受付終了)

令和8年度の目玉制度の一つ。賃上げを実施する県内中小企業の設備投資等を支援した。

  • 一般型:補助率1/2、上限300万円(下限50万円)、賃上げ要件:事業場内最低賃金+30円
  • 成長投資・賃上げ加速型:補助率1/2、上限1,500万円(下限300万円)、賃上げ要件:事業場内最低賃金+50円
  • 対象:県内に事業所を有し従業員1名以上の中小企業者
  • 公募期間:2026年4月27日〜9月1日(複数回締切制)

次年度も同様のスケジュールであれば、4〜5月に新年度公募が開始される見込みだ。3月の県議会定例会後に公式ページを確認したい。

令和8年度あおもり起業支援事業費補助金(2026年6月30日で募集終了)

  • 補助率:1/2、上限200万円
  • 対象:県への移住者または県内在住の若者・女性で、デジタル技術を活用した起業や事業承継に取り組む方
  • 公募期間:2026年5月11日〜6月30日
  • 窓口:公益財団法人21あおもり産業総合支援センター

令和8年度産業DXモデル創出支援事業費補助金(2026年6月19日で募集終了)

  • 補助率:2/3、上限400万円(採択は2件程度)
  • 対象:県内中小企業(青森県DX推進ラボの支援を受けてDX推進計画書を策定した事業者)

令和8年度脱炭素化・カーボンニュートラル関連設備導入支援事業費補助金(2026年8月21日で公募終了)

  • 補助率:1/2、上限500万円
  • 対象:県内に本社または事業所を有する中小企業者(法人・個人含む)
  • 要件:GX推進アドバイザーによる支援を受けること、付加価値額向上・炭素生産性向上を実施すること
  • 窓口:一般社団法人青森県工業会内「GX推進事業担当」(017-718-5399)

令和8年度青森県スタートアップ補助金(2026年7月17日で募集終了)

  • 補助率:2/3
  • 上限額:創業枠300万円・事業拡大枠500万円
  • 窓口:公益財団法人21あおもり産業総合支援センター(017-777-4066)

問い合わせ先

制度・相談内容担当部署電話
若手人財確保・定着支援、プロフェッショナル人材誘致 青森県こども家庭部 若者定着還流促進課 017-734-9401
中小企業支援施策全般 経済産業部 経済産業政策課 017-734-9366
地域企業向け補助金全般 経済産業部 地域企業支援課 017-734-9373
起業・スタートアップ支援補助金 公益財団法人21あおもり産業総合支援センター 017-777-4066

FAQ

個人事業主でも青森県の補助金は使えますか?

制度によります。「プロフェッショナル人材誘致促進事業費補助金」は法人・個人事業主どちらも対象です。「中小企業若手人財確保・定着支援事業費補助金」は中小企業を対象としており、個人事業主での申請可否は窓口(017-734-9401)に直接確認することをお勧めします。

国の小規模事業者持続化補助金と青森県の補助金は同時に申請できますか?

同一の経費に対して両方を受けることはできません。ただし、国の補助金で賄う経費と県の補助金で賄う経費を明確に区分すれば、異なる取り組みに対して両方申請することは可能です。申請前に各窓口へ確認してください。

令和9年度(2027年度)の公募はいつ頃始まりますか?

令和8年度の実績を見ると、多くの制度が4〜5月に公募を開始しています。県議会の3月定例会で予算が確定するため、4月以降に青森県庁の「補助金・助成金」ページや担当課の新着情報を定期確認することをお勧めします。

申請書類はどこで手に入りますか?

各制度の公式ページからダウンロードできます。制度ごとに書式が異なります。様式が見当たらない場合は担当課に電話すると案内してもらえます。

補助金の採択率はどのくらいですか?

制度によって大きく異なります。産業DXモデル創出支援事業費補助金のように「採択2件程度」という少数採択の制度から、随時受付で先着順の制度まで様々です。採択率よりも「申請要件を満たしているか」「書類が整っているか」を重視するほうが実際の採否に影響します。

参考文献